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「あーちゃん。映画楽しみだね」
「ねっ!百人の侍、楽しみだね」
今日見る映画は勿論、武士物。キョウと会話を弾ませていると反応したのはタカ兄だった。
「そんなの見ねーよ」
「えっ。その為に来たのに?」
「だって侍が百人もいるんだろ?誰が誰か分かんなくなりそう。それ以前に絶対詰まらそうだけど」
「ヤマトは?」
キョウがヤマ兄を味方につけようと応戦。
「ホラーがいい」
その一言にキョウは「ヤマト一人で見ろよ」と何故か半泣きになっていた。
いよいよホラーという言葉自体にも過敏になってきたのか。先が心配だ。
「じゃあさ、あーちゃんと二人で映画見るから、二人は好きなの見ればいいじゃん」
キョウが言う。
確かに四人で見る必要はないけど。
でも、やっぱりヤマ兄と見たい。
それに、タカ兄に二人きりになるなって釘を刺されたことを思い出して同調出来なかった。
「百人の侍でいいよ」とタカ兄とヤマ兄の声がハモって聞こえた。
気の合わない兄妹がひとつのことを決めただけなのに、団結力を感じてしまった。
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