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思わず横を見ると、その人もあたしを見てた。
あたしは心臓が止まるかと思った。
軽く遊ばさせた髪の毛。眉毛と横幅のあるアーモンド形の瞳の間隔は狭く並ぶ。程よい高さの筋の通った鼻と綺麗に置かれた唇。
「ヨ……ヨリ様?」
すっとした眼差しで見つめ返されたので、とりあえず、「これ、いらないです。どうぞどうぞ」とスナック菓子を手渡した。
すごい!こんなとこになんでいるの?
よく分からないけど驚きすぎて、嘘じゃないかと思った。
憧れのヨリ様と、スナック菓子の取り合いをしそうになるなんて夢にも思わなかった。
「見たことある」
そう言った。ヨリ様の声。こんな声してるんだ。ちょっとイメージより高めかもしれない。
……って、「見たことある」って何?
「えっ?」
「……」
ジィーッとあたしの顔を不思議そうに見つめるから、顔がほてり始めてきた。
そんなことより。
「あの……ファンなんです。握手して下さい」
勇気を持ってそう言うと、「いいよ」と大きな手の平を差し出して微笑んだ。
夢が叶った?
思わず両手で握りしめてしまった。
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