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それから大きなショッピングモール内にある映画館に着いた。
そこで、百人の侍を見たのはいいのだけれど。
席順がタカ兄とキョウの間に挟まれてしまった。ヤマ兄は端っこ。
ヤマ兄とひとつのポップコーンを分け合うドリームでさえ叶えられない始末。
兄妹で出掛けるだけなのに、こんなにもどかしくなるなんて思わなかった。
たかだか、ひとつの席を挟んでるだけなのに。
どれだけ好きなんだろうと自分でも呆れる。
上映が終わると、「すっげー詰まんなかった」と開口一番に言うタカ兄。
「面白かった」とキョウとあたしが反論すれば。
「本屋に行きたい」と、すでに見ていたはずの映画自体に興味のなさそうなヤマ兄が仏頂面で言った。
「本屋?」
「あたしも行きたい!」
思わず挙手してしまう。
行きたそうな顔をしたキョウは、急に首ねっこをタカ兄に掴まれて止められた。
タカ兄は何かあるのかそのまま「じゃあ、後でな」と強制的に二手に別れた。
タカ兄さま!
やっと二人きりになれたと思うと足取りが弾んでしまう。
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