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「暇つぶし……かぁ。じゃあ、やってて楽しいとかそういう感じじゃないのかの?」
「んー。逆にさ、最初の頃は、新しい環境が新鮮だったから、ただ楽しかったよ」
「楽しかった?」
「ああ。でも続けていくと、この世界って想像と違うのな。華やかな様で華やかじゃないし」
「……うん」
「ど素人だから、求められてることが出来ないことばっかで、かなり自分との闘いだったな。……まあ、今もだけど」
意外な気がした。タカ兄の弱音はあまり聞いたことがなかったからだ。
自分本位な性格だからか、いつも自信満々に見えるのに。
「勝手に調子に乗って楽しいって思ってたのが、悔しいって気持ちに変わってさ。けど、気付いたから、自然とどんどんハマッていったんだよな。今だって、まだまだって分かってる。だけどそれでもやりたいと思えるからかな。そうだな。今の方が最初の頃より、楽しい……つうか、充実してるのかもな」
「……ふうん。暇つぶしから見つけられたんだ」
「そういうのってさ、気持ちに余裕がないときには見つけられねーもんかもよ?頭で考えるとそこばっかに意識がいって、周り見えてないもんだろ?」
「んー?」と、一瞬で理解できず、悩んだ顔したら、
「お前はいつも見えてねーか。そうだな。悩んでんだったら人と話してみたり、今興味あることを広げていけばいいんじゃねーの?」と優しく言った。
「ふぬ」
「……まあ、これも血筋なのかなって勝手に思ったりしてるけどな」
「血筋?」
思い切り聞き返すと、何かに気付いた様な顔をした。
それから、
「アサカは、あんまり親父の話聞かされてないか」
と、小さく呟いた。
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