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「タカ兄、お父さん覚えてるの?」
「覚えて……ないもんだよな。もしかしたらあれかな、みたいな記憶しかない」
「あたしは全くない……」
「そりゃ、お前らが生まれてすぐ死んだもんな」
タカ兄の隣に腰を降ろした。
「なんで死んだの?」
「飛行機事故らしい」
「飛行機事故?」
ゴクリと唾を飲み込んでしまった。想像もしてなかったからだ。
「遺体の損傷も激しくてなかなか身元も判明しなかったみたいだけどな」
「……」
「28くらいだって。わけーよな。俺があと少し生きれたら、親父の年なんか追い着けるもんな」
「……お母さん、お父さんの話を聞くと笑ってごまかして教えてくれないのって。そのせい?」
そう聞くと少し考えているのか口を閉じた。軽く首を捻る。
「どうだろ。そうなのかもな。言うのが辛かったのかもな」
「……」
「それからあの人、酒ばっか呑むし。男は取っ替え引っ替えって。祖母さんがぼやいてたけど。そういうことなのかもな。まぁ、今となっては好きでやってる様にしか見えないけど」
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