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ヤマ兄をサソリ固めで起こして、いつもの様に二人で登校する。
バイクのメットを手渡しながら、「頭痛大丈夫か?」と静かな声でヤマ兄が言った。
「あっ。うん」
「なんか寝むそうだけど。寝れた?」
「うーん。あんま寝てないかも。ズキズキして」
「無理すんなよ?」
「今日は大丈夫じゃ」
「具合悪くなったら帰れよ」
「……うぬ。かたじけぬ」
もし。
もし。
キョウがあたしを好きなら。
ヤマ兄にそのことを言ってしまったら。
家族はどうなるんだろう。
そう思うと恐くて、眠れなかった原因なんて伝えられるはずもなかった。
勘違いだといい。
そう思っているのに、キョウと二人きりになるのが恐い。
決定的な言葉を聞きたくないから。
ヤマ兄のことが好きだから。
キョウはお兄ちゃんにしか見えないから。
それに双子ちゃんなあたし達は血だって繋がってるんだと思う。
だから余計に。あたしは、キョウを受け入れられない。
それをキョウに伝えたら、あたし達はどうなってしまうんだろう。
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