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「……お腹空いた。文化堂のタイ焼きキョウと食べたい」
だからか、泣きたくなってしまう。
「クルシュウナイのサイン会にキョウと行きたい。チコウヨレでもいいよ。あっ、百人の侍、また見に行く?」
あたしの問いかけに首を振らなければ、何も答えない。
キョウの息遣いや、顔が見えるだけだった。
あたしの知らないキョウの顔だった。
シャツのボタンが外されていくのがわかる。
「お好み焼き食べに行こうよ。最近、行ってないから。……キョウ?聞いてる?」
スカートの中に入っていたシャツの裾を引っ張った。キャミソールをたくしあげると、そこからキョウの手が肌の上を這うように、上へと伸びてくる。
「お兄ちゃん……。キョウは優しいお兄ちゃんでしょ?これからも、そんなキョウでいて欲しいの……じゃ」
声は震えても泣かない様に、言い終わって唇を噛んだ。
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