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キャミソールの中にある手の動きが止まった。
「あーちゃん」
「んっ?」
「好きな人いる?」
「……うん」
「そう」
それ以上は何も聞かずに、ただ俯いてた顔をあげて、あたしを上から眺める様に見た。
「あーちゃん、好き」
「あたしもキョウのこと、好きだよ。お兄ちゃんだから」
キョウは、また哀しそうに微笑む。
「お兄ちゃんだから?」
「うん。お兄ちゃん」
キョウの身体が倒れ込むと、止まっていたはずの手が動き出した。
「やっ……」
さっきよりずっと上の、触れられたことがない場所。そこに唇を押し当てた。
「い……たっ」
この前とは比べ様がない痛みだった。噛まれたのかと思った。
まるで憎まれてるみたい。
そうだよね。
キョウを裏切らないとか味方とか言っておいて、結局受け入れられない。
核心に触れない様に「お兄ちゃん」を強調するだけしか出来ないんだ。
だから憎まれてるのかもしれない。
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