保健室のキス。

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ドアを開け、足早に下駄箱へと向かう。 嘘ならいい。今起きたことが嘘ならいい。 何度も何度もその言葉が頭の中を駆け巡る。 嘘ならいい。 下駄箱を開けて、ローファーに手を伸ばした。激しい自分の息遣いにさっきの出来事を思い返してしまう。 「お腹、痛い」 呟いてしまった一言に、ただ切なくなる。 キスや、キョウの手。声。息遣い。いつもと違う男子の顔。 キョウが恐くて、胃がずっと悲鳴をあげてたなんて。 お兄ちゃんなのに。 キョウなのに。 他人と一緒みたいで、哀しかった。
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