こんなあたしでいいの?

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「裁縫も楽しいわよね」 放課後、あたしの目の前で刺繍をするカマさんが家庭科室にいた。 仮入部、初日。 今月はどうやらお裁縫をするみたいで個人で縫いたいものを好き勝手に縫っていいらしい。 とりあえず何も用意してなかったあたしはカマさんの裁縫道具やら布やらを借りてみたけど。 お弁当の巾着袋を作ることにしてみた。 「素朴な疑問です。なぜカマさんがいるんですか?引退されたんじゃ」 「アサカちゃんが心配だからに決まってるでしょ?不器用そうだもの」 クルンとした睫毛を激しく揺らした。 失礼な。 ちなみに家庭部のメインメンバーは仮入部をしたあたし含めて五人。弱小部らしい。 大人しそうな、カマさんに逆らえなそうな子ばかりだ。 だからここにカマさんがいたって誰も文句等言わないみたい。 「カマさんは余裕なんですね。ヤマ兄なんか引きこもりですよ。勉強ばかり」 「あたしは余裕よぉ。こう見えてもアサカちゃんより百倍頭いいわよ」 「……そっすか」 と、そっけなく返す。
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