哀しい笑み。

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身内に見られるのに抵抗があったのか、始まる前は 「オラウーは出て行け。俺がいいと言うまでここの扉を開けるな」 なんて、鶴の恩返しの鶴の決め科白みたいなことを言って、あたしを脅していたけど。 撮影が始まってしまえば、こっちのものだ。 出て行ったと見せかけ、スタジオに顔を出す。 変な顔でもして、笑わせてやろうか、なんてくだらないこと思ったけど。 あれ程嫌がっていたあたしの存在なんて眼中にもないらしく、カメラマンさんの言われるポージングや仕草、表情を次々とこなしていく。 すごく集中しているのが伝わってきて、緊張感からか、背筋がゾクリとした。 「ちょっと休憩!」の声が響いた。 そこで、あたしに気づいて「てめー」と口が動いたのを見て、次は違う意味で鳥肌が立った。
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