哀しい笑み。

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「ちょっと周りも見てこない?」と、サヤコがあたしに声をかけた。 ここの建物には、スタジオが複数入っているみたいで。 撮影で使っている所もあるから、他のスタジオとかに行かないようにね、と、注意は受けていた。 けど、見学出来る範囲で歩くのはいいだろう。 「やーん。もう現実の男好きになれないかも」と、サヤコはウキウキしてる。 「そう?」 「そうだよー!タカイチさまを筆頭に、イケメンモデルがいっぱい……夢のようだよー」と、あたしの肩をばしばし叩く。 その勢いに、あたしかなり押されている。 でも喜んでくれたからいっか、と思っていると、急に真面目な顔になって。 「アサカ、本当にありがとね」 「ん?」 「俄然やる気がでた。実はさ、出版社に入社なんて、倍率高いし、ちょっと自信なかったんだ。けど」 「けど?」 「自信とかの前に、やっぱりやってみたいって改めて思ったよ」 と、力強い口調で言って、笑った。
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