哀しい笑み。

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ふっと振り返ると。 さっきいたキャバ嬢みたいな人。今度ははっきり顔が見えた。濃いめの化粧が施されて、お人形みたい。高いヒールを履いてるけど、脱いだらあたしと同じくらいの身長かもしれない。 はて。と思う。なんとなく、タカ兄とキャバクラという夜のお店で働く人が結びつかないからだ。 だけど。 「やっぱり」 と、その女子は躊躇うことなく、タカ兄に駆け寄って、そのままギュっとタカ兄に抱き着いた。 一瞬、びっくりしたけど。 すぐにタカ兄のきっと遊び相手の女子なんだと思った。 こういうバサバサのまつ毛の女子、家に連れてきたことだって、あるし。 あのときは、私服だから、こういう仕事をしている女子と遊んでいたなんて思わなかったけど。 きっとそういう子もいたのだろうって。 そう腑に落ちたのに。 タカ兄がひどく驚いてるのが伝わってきて。 びっくりする。 身動きができない。言葉にならない。 そんな感じが伝わってくるのだ。 ドキドキと心音が速くなる。 だってって、思う。 「やめろ」とか言って、冷たい態度で女子と接する。 それが、タカ兄だと思っていたからだ。
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