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「もう、やめたのか?」
「え?」
「あの仕事」
少しして、うんって頷く。向いてなかった、やっぱって。
「今、これが仕事か?」
うんって、頷く。
「……何やってんだよ」
怒りを押し殺したような声。
「なに、やってるのかな?」
へへっとまた笑う。
けど、瞳が段々潤んでくるのがわかって。
今にも泣き出しそうだった。
「今日、嫌だったんだ。ここに来るの。カメラの前に立つのも怖かったし。でも、来て良かった。あたし、本当はね……」と言って、洟をすすった。
「本当は、ずっと謝りたかったんだ」
と、涙が頬を伝っていった。
「嫌いなんて、言ってごめんね。ずっと後悔してた」
タカ兄の腕が、彼女を抱き寄せたから。
あたしは、そっとその場を離れた。
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