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近付いてくるって気配は感じた。だから身動き出来ずに車が走るのを見送るみたいに固まってしまった。
ヤマ兄があたしの隣に並んだけど、見れなかった。
「偶然、会っただけだからね。病院の帰りなんだって。犬見せてくれるって言うから少し話してただけだからね」
早口でまくしたてる様に言うと、「そう」としか言わなかった。
「何もないよ?さっき遊ぼうって言ったのだって社交辞令だと思うし。遊ばないからね?」
あたしの声がやむと、シンと静まり返る住宅街。それが余計にあたしの心を寂しさで圧迫させる。
また、信じて貰えないんだろうなって思うからだ。
だけど、「ごめんな」ってヤマ兄が言った。
「えっ?」
「泣かせて悪かった」
「…ヤマ兄?」
その声があまりにも静かだったから、恐かったはずのヤマ兄の顔をつい見てしまった。
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