二日目 睡眠

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「固い」 眉間に皺を寄せてハルは不平を口にする。 「なんだ一体」 「ベッドが固い」 言いながら自分が座っているベッドをばしばしと叩く。 「いつものことだろ。何を今更」 「人間にとって睡眠は大事だと思うんだ」 「まぁ三大欲求に並べられるくらいだからな」 「そんな睡眠をする大事な場所がこんな粗末なものでいいのか。答えは否」 「いつにも増してテンション高いな」 「睡眠の為なら俺は何だって出来る気がする」 「お前の目が煌めいているところを生きているうちに見られるとは思わなかった」 「とにかく俺は安らかな睡眠がほしい」 「永遠になりそうなフレーズだな」 「俺は欲望に忠実なんだ」 「じゃあ食欲と性欲にも忠実なのか」 「……………俺は睡眠欲に忠実なんだ」 「性欲って言葉に顔赤くするってうぶか」 「あーうるさいうるさい。とにかく俺は早急にベッドの改善を求める」 「求めるって言ったってどうするんだ」 「…………………………」 「おい、目を逸らすな。さては考えてなかったな」 「そんなことない」 「じゃあ言ってみろ」 「それはあれだ、アルプスの少女的に手作りを」 「干し草無いけどな」 「じゃあ自己修復」 「詰める綿も修理道具も無いけどな」 「総取っ替え」 「一囚人にそんなこと出来るわけないだろ」 「じゃあどうしろって言うんだ」 「俺が知るわけないだろ。お前が言い出したんだから」 「だってもう案無い」 「ほんっとに何も考えてなかったんだな」 「どうしたもんだかなぁ」 「……看守に頼めば或いはどうにかしてくれるかもな」 「看守さーん」 「早いな」
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