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某国某所にある某刑務所。
「ハル!…ハルセ=ユミリア!」
「んー…」
「起きろ!」
ハルと呼ばれた青年は、渋々といった様子で決して立派とは言えないベッドから起き上がる。
「んー!はぁ…おはようジェイロ」
白黒の服を身に纏い伸びをした彼は囚人で、彼と檻を隔てて立つジェイロと呼ばれた男は看守。
「あぁ、おはよう」
「毎朝毎朝ご苦労様だな」
「仕事だからな」
未だ眠そうに欠伸を噛み殺しながら合うハルに、ジェイロは苦笑しながら言葉を返す。
この刑務所の朝は彼の点呼から始まる。
「お前は相変わらず眠そうだな」
「育ち盛りですから」
「成人男性は育ち盛りとは言いません」
「いいや、俺は後半伸びるタイプだから。スロースターターだから」
「スロースターターにしても遅すぎるから。成長期にこんな超スロースターターないから」
会話の途中、ハルは口を尖らせながらブーイングをする。
「ジェイロがそんなに夢のない奴だとは思わなかった!がっかりだ!」
「夢で身長は伸びないよ」
「ズバッと言うな!」
苦笑しながらもはっきりと言い切るジェイロにハルは食って掛かる。
「おーいジェイロ、早く点呼!」
雑談に花が咲いていたところに点呼の順番を待っている囚人から声がかかる。
「あー、悪い今行く!じゃあまたなハル」
「おー」
手を振るとジェイロは次へ進んでいく。
某国某所にある某刑務所。
ここでは、今日もまた個性豊かな囚人と看守達が個性豊かな生活を送っている。
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