虚水(うつろみず)

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 あの日以来、わたしは事ある毎に  その岬が一番よく見える対岸のパークアベニューへと足を運んだ。  好奇心とは違う、言い表す事の出来ない何か確信めいた感覚が湧き上がるのだ。  その日は午後2時半にさしかかろうとする頃にパートの仕事が終わり、  日課となっていたその男を観るため、いつもの場所へと足を運んだ。  立ち入り禁止の柵を乗り越えると、直ぐ下の削られた崖に繋がる小道がある。  崖下に出ると、橋を見上げる側に小さな天然の滝。  その場所から運河を見渡すと西の方角に切り立った岬が見える。  わたしがいるこの場所からの距離は、凡そ200m程だろうか。  岬の壁面は、土、岩石、木の幹や蔦が入り混じった大小数々の凹凸が並び、  悠久の時が齎した天然の造形を堂々と晒している。  ともすれば、対岸を占拠するかの様に人の手の入った領域を疎ましく…  或いは嫉妬するかの様な姿だ。  枯れ木も山の賑わいとは言うが…その全景は「みすぼらしい」と言う他無かった。
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