虚水(うつろみず)

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 ふと対岸の岬に眼を移すと、天に昇ろうとする龍の如く__  そう見えたのはわたしなりの慣性故に、そう比喩すべきかは定かでは無いが。  運河の中から聳え立つ大木の捻じ曲がった幹が大きく揺れている光景が見えた。  揺れは不規則で、時折反動を付けて跳ねる様な動きを見せる。    わたしは確かな違和感を感じた。  あの幹の数をして、1本1本が別々の方向から力を加えられた様な変則的な揺れ…  いやそもそも、大木がああまで揺れる程の暴風は吹いていない。少なくとも今立っているこの場所には。  何らかのケモノの類だろうか?それも考え難い。鋭角80度程のその地形に獲物が寄る事はないだろう。  鳥であれば、あの場所に巣を作る利点は見受けられるけれど。  出し抜けに、捻じ曲がった幹が数本、根元から折れるさまが見えた。  その刹那、わたしは枝分かれした幹の根元部分の後ろに動くものをハッキリと捉えた。  あれはなに…?  わたしはカーゴパンツのポケットから双眼鏡を取り出し、レンズ越しにその方向に眼を向けた。
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