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「ね、君。青いライオン、って、見たことある」
それはきっと質問であるはずなのに、疑問形とも言い難いイントネーションで、隣に座ったメガネの男子は、じいと私の目を見た。
レンズに反射する興味津々なその瞳が、やけに印象強く、記憶の片隅に残っている。
「……どうかな」
そのとき、私に言えたのは、たったこの一言だけ。
それだけで、彼は満足したように重く頷いて、メガネを押し上げた彼の視線は、もうこちらを向いていなかった。
世の中にはいろんな人種が揃っている。
「高校入学、おめでとうございます。これから一年間、担任をつとめることになりました―…」
急に耳に際立った声高の女性が、軽い自己紹介を始めた。
つまらない担任の挨拶を聞くのは、これはいつも思うことだけれど、とても面倒なことだ。
窓際では、桜の花びらが一枚、はらりと空を横切った。
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