水軍衆

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つむじ風の様な一団が道とない山道を進んでいた。 善吉率いる忍軍は見張り役1名を含めた10名は途中で3,3,4名の3組に分かれて清州方面へ別々に進路を取った。 今回の焼き討ちは善吉の描いた通りの結果になった。つまり1か所から火が出た事、証言者を残せた事(飯炊女)、山伏や猟師といった漂浪の民を演じきれた事、館と食糧庫を燃やせた事などである。 これで十中八九、付け火とは勘ぐられないはずである。全てがうまく言った事が善吉に僅かな気の緩みを生じさせた。 善吉は間もなく三河と尾張の境に掛かろうかという処で異変に気付いた。 (ぬっ、尾けられていた?) 遠巻きに数人の視線を察知した善吉は供の3名に喉笛で合図を送ると散開させながらも疾走を止めなかった。 (どこの手の者か?こちらの倍はいるな・・・) 善吉は最悪戦闘になった時に備えて頭脳をフル回転させていたが相手方に殺気が無い事にふと気が付いた。 (何が狙いだ!我らの正体を嗅ぎつける腹か?今川の手の者だとすれば・・・) その時である。四方から八方手裏剣が襲ってきたのである。 善吉は何事も無かった様に最小限の動きでそれをかわしながら立て続けに棒手裏剣を3本投げた。 (手応え有り!これで人数的に互角じゃ) 「集っ!!」 善吉が気合を発するように号した。
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