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棒手裏剣を投げた方向を皆が観てみると人の姿が陽炎のように揺らめいていた。
(ぐっ、この術は?)
流石に善吉以下4名が死を覚悟した時であった。
「手荒な挨拶、失礼致した」
声の主が見えない善吉は少々イラつきながら返答した。
「挨拶とは如何なる所存か?伊賀者であろう?姿を見せられよ」
善吉は伊賀者が得意とする分身の術からそうカマを掛けた。
「害意はない、これをヌシらの主に渡して頂きたい」
その声が終わると一枚の文がヒラヒラと降って来たのを配下の一人が見つけると皆の注意がそちらの向いた。
その瞬間、相手方の気配は消え辺りは木々が触れ合う音だけがする山の景色しかなかった。
気が付くと善吉は総身に汗をかいて心の臓の鼓動が辺りに響くような錯覚に陥っていた。
(恐ろしい程の術者だ・・・ともかく殿に報告だ)
善吉の脳裏には知多衆への焼き討ち作戦の成功等、微塵もなく突如現れた謎めいた事態で埋め尽くされていた。
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