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「松平家が今川を疎んでいるならばこれをワシに見せる事で何を期待しておる?」
友春が当然の疑問を二人にぶつけるもすぐに答えを出せずにいた。
「殿の才をどこまで買っているのかは解りかねますが、何らかの支援、若しくは策を欲しているのかもしれませぬ」
新吉はそんな推測を口に思案を続けている様である。
(信長様でなく俺に知らせるとは・・・何がある・・・元康の立場だったら・・・)
「左様、何かを期待しているのは事実じゃろう。そして大殿でなく、足軽大将であるワシに知らせた事・・・これが気になる」
友春が思案の最中にそう切り出しさらに続けた。
「元康殿の悲願とは何じゃと思う、善吉よ」
「はっ、お家再興でござりましょう」
「そうじゃ、一個の大名として、一個の男として起ちたいのではなかろうか?つまり、今川家の支配下に甘んじる事には耐えきれず、かと言って大殿や近隣の大名に鞍替えしても所詮は従属大名が関の山じゃ」
友春の言葉に二人は頷いた。
「それに仮に織田家に鞍替えしてもじゃ、裏切り者の誹りは免れぬし、三河が真っ先に戦場になり国が弱まるのは好まないであろう」
「ならば、我らの手で治部大輔を除けと言うておるようですな」
善吉が核心をついた。
「そうじゃ善吉、織田家としてもそれが一番やもしれぬが暗殺は難しかろう。相手もそれくらい対策しておるわ」
「ならば今川方との決戦で倒すしかありますまい」
友春は黙って頷いたが善吉と新吉は怪訝そうな表情を作るだけだった。
それもそのはず今川方が攻めてくるとあれば駿河・遠江・三河の三国の大軍を相手にせねばならないからである。
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