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「まぁ良い、この文を寄こした忍の主も淡い期待を抱いての事じゃろう。何かあれば又何らかの接触があるはずじゃ、善吉、三河方面への諜報に力を入れてくれ」
友春はそう結論付けしばらく様子を観る事にしたのであった。
「明日にでも大殿に知多衆への牽制が首尾良く終わった事を報告するとしよう、新吉殿は九鬼家へ謝礼金の残りを届けて下され」
「ははっ」
そうして友春と善吉は長瀬家の屋敷へと戻ったのである。
友春は千に給されながら夕餉を取りつつも思念は伊賀忍と思われる者が寄こした文に飛んでいた。
(仮に松平からの文だとしても元康の意思か?それとも行く末を案じた家臣の策か?この当時の元康の腹心といったらやはり本多正信や酒井忠次、石川数正あたりか・・・)
「殿・・・」
(史実の桶狭間の戦いは信長様の奇襲って事で相場は決まってるけど、実はもっと複雑に、謀略戦だったのかもしれないな・・・)
「殿・・・」
(どちらにせよ俺の独断で動くのも限界があるかもしれないな・・・)
「と~の~!」
何度目かの千の問いかけにようやく気付いた友春は慌てて千の方を観た。そこには少々拗ねて口を尖らせている千がおり思わず友春は笑った。
「あぁ、すまぬすまぬ、ちと考え事をしておっての・・・」
「もぅ、知りませぬ」
友春はその夜、千のご機嫌取りに追われて過ぎていった。
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