嫌われ者の行進

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 彼は、この街のどこかにあるごみ捨て場で生まれた。 場所は覚えていない。生きることで精一杯だったから。 ただ、この時から既に、彼の尻尾は折れ曲がっていた。 生まれてすぐ母親はどこかに行ってしまったし、共に生まれた5匹の兄弟たちもみな死に、たった一匹、死に物狂いで生きてきたのだ。 体が小さい赤ん坊のうちは、ごみ捨て場に隠れながら暮らし、人間たちが捨てていくごみを漁りながら、なんとか食いつないでいたが、野良犬やカラスに襲われ、生まれた場所をおわれた。 棲みかを公園の林の木の虚に移したが、食べるものは少なく、小鳥やネズミが捕れるようになるまでは、幾度と無く餓死しそうになった。 少し体が大きくなってからは、前とは別のごみ捨て場を探し回ったが、一番はじめに見つかったごみ捨て場では、そこを縄張りにしていた別の野良猫たちにずたずたにされて、命からがら逃げ出した。 しかし、それらのどんなことよりも彼を脅かしたのは、他でもない人間だった。
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