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灰色の重たげな雲が、空に凹凸を作っている。
街路樹には木枯らしが鳴り、その枝には僅かに残った枯れ葉が、しがみつくようにしてばたばたとはためいている。
大通りを歩く人の数もめっきり少なくなり、見かける人間たちは皆が、上着の襟やマフラーなどで顔を隠すようにして歩いている。
レンガの敷き詰められた道はとても冷えていて、草むらや土の上と比べると、足の裏がピリピリするほどだった。
頭上からは、白くてふわふわしたものが降ってきて、彼の黒い体を白くしていく。
彼には、それが面白くなかった。
俺は黒い自分を誇りに思っている。
どんなに罵声を浴びせられようが、何度人間に追い回されようが、それは変わらない。
だから、白くなんてしないでくれ。
幾ばくかの強がりは含んでいるのかもしれない。
でもそれは、紛れもない彼の切実な思いだった。
生まれてからずっと、飢えに苦しんだ時も、野良猫たちから自分の寝床を勝ち取った時も。
そして、悪魔の使いと呼ばれたあの時も、この体で生きてきたのだから。
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