嫌われ者の行進

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夏も過ぎて、日毎に太陽が顔を出している時間が短くなったある日。 日暮れから夜へと移り変わる頃。 それまで華やかな街に活気を与えていた、花屋やパン屋、洋服屋やおもちゃ屋などが店じまいをする、そんな時間。 街には街灯が点りはじめ、家々からは、家族の笑い声が聞こえてくる。 今日は週末。 夜の街には、昼とはまた違った賑やかさがあり、多くの人が行き交い、ネオン灯やショーウインドウの光が、夜の闇を薄めていた。 だが、そんな灯りで満ちた街を我関せずで夜に紛れながら、威風堂々と歩く者が、一匹。 人が行き交う大通りの真ん中を、ゆうゆうと進んでいく。 ツンと鼻先を高く上げ、しなやかに足を運び、背筋をしゃんと伸ばして。 これが人であるならば、まるで騎士か王族のような、威厳と風格をもっていた。 しかし、彼は人ではない。 ご自慢の、中ほどで折れ曲がったかぎ尻尾を水平に立てて、ひげを小まめに動かし、二つのとがった耳は用心深く回りの微かな音も聞き逃さない。 彼は、名前もない黒猫だった。
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