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生まれてから2度目の春を迎えた彼は、体つきはもう立派な大人の猫へと成長していた。
他の野良猫とのケンカも当たり負けしなくなり、生きていくだけに必要な食糧は、自分で手に入れることができるようになった。
彼は公園の木の虚から、寝床をあちこちに移し、川にかかる橋のたもとや、街中のごみ捨て場。またある時は、セントクレースト修道院の敷地内にある、小さな馬小屋に潜り込んだりもした。
ある日のことだった。
馬小屋の暖かな干し草の中で目を覚ました彼は、猫らしくひとつ大きな伸びをした。
そして、すぐ側で干し草を食んでいた、白と茶色のまだらの馬に尻尾を柔らかく一振りし、おはようとあいさつをした。
馬も、長いまつ毛に縁取られた優しげな目を向けて、鼻をならして挨拶を返した。
素敵な朝だった。
馬小屋を出ると、空は青く晴れ渡り、修道院からは讃美歌が聞こえ、それに合わせるように鐘の音が街に響いていく。
彼は幸せそうに目を細め、陽の光を体いっぱいに浴びて毛繕いをした。
柔らかな風が、彼の黒い毛をくすぐっていく。
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