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ああ、この体が黒いばっかりに、この尻尾が折れているばっかりに…。
他の猫たちは散り散りに逃げていく。だが、追いかけられ、罵声を浴びせられているのは自分だけ。
何を悪いことをしたわけでもなく、他の猫たちと同じことをしただけで、方や笑顔で餌をもらい、方やすごい形相で皿を投げつけられる。
それもこれも、すべてはこの体のせいだという。
はじめから、生まれ落ちたその瞬間から、俺には理不尽な運命が待っていたっていうのか。
あまりの皮肉さに、乾いた笑みが浮かぶ。
彼は馬小屋まで戻り、木を上ってその屋根に飛び移ると、まだぎゃあぎゃあと騒ぎ立てているシスターたちに、毛を逆立ててひとつ、ハーッと威嚇をする。
彼女たちの最後の罵倒の言葉は聞かずに、彼は修道院を後にした。
もう二度と、人間なんて信じない。これまで通り一人で、自分の力で生きてやる。
彼はそう心に誓ったのだ。
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