1:猫の鼠を窺うよう

2/82
前へ
/887ページ
次へ
今日の桜木女子大学は、多くの人で溢れていた。 いつもは女性ばかりのこの敷地内も、今日ばかりは大勢の男性が入り込み、チラシを片手に笑顔をふりまいている。 廊下を進んでいた水川恵美(みずかわ えみ)の手に置かれたチラシは、すでにかなりの厚さになっていた。 「なんか、すっごいねえ」 「男の人がこんなにいるのって、なんか変な感じ」 「あれ、恵美は高校までずっと、共学だったんでしょ?」 そういいながらチラシで顔を仰いでいるのは、山田彩(やまだ あや)。 大学から入学した恵美とは違って、彩は幼稚園の時からずっと桜木で学んできた、お嬢様である。
/887ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8182人が本棚に入れています
本棚に追加