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言っていいものかどうか。バンビは言葉につまってヘラリと笑う。
するとこれまたどこか手首のあたりからマジシャンみたいに1枚の写真を出してピッと立てた。
例の空港のポラだった。
「なんでっ……なんでそれあなたがもってるんですか…?!」
赤くなって取りかえそうと手をのばすとたやすくかわされ、それどころか腕をつかまれてカウチになだれこんだ。
「Как?(どうなの?)」と囁かれてから、心は瞬時に定まった。
(この人…あぶない……)
「じょ…冗談はよしてくださいよ~!」
バンビは写真を引ったくるように取り戻すとそそくさとカウチを離れた。さいわいこれ以上は迫ってこないようで少しほっとしながら手をパタパタ振る。
「нетですよ~、нет!」
リックは「accident」なんて訛って笑いながら機敏に起きあがったが「Не могу поверить」と懐疑的だ。
「ほんと…ですよ。……あ、私、あれかな? まだ、時差ボケかなぁ?」
青い瞳が見ている。
よどみなく強く。
それが急に怖くなって、バンビは部屋のあちこちにガタガタとぶつかりながら自室へ戻っていった。
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