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「マッタク。 リックノ奴 油断モ 隙モ アリマセン!」
「えっと…あの人誰ですか?」
しばらく唖然としたのちバンビは尋ねた。
「アー、彼ハネ、リチャード・フィッツジェラルド・ド・モンフォール。」
「長っ…!」
「リック デ イイデス! 振付ケ師デス! デモ危険。奴、スケコマシ! バンビ 気ヲツケテクダサイ!」
「私は……大丈夫です! 私には、先輩という人がいますから。」
ぽっ。と頬を赤らめてした宣言の可愛いこと。娘のいないシューラもすっかり父親気分になってハグをした。あたたかくて柔らかいハグ。フフッと、バンビが笑う。
暖炉の中では小枝の乾いた表皮がパチパチとはぜる音がしている。アイボリー色した壁に可愛らしいタペストリー、馴染みの良い足元のラグ、窓際には繊細なカッティングの真鍮をまとったランプ。このアパートはシューラみたいだと思った。とてもあたたかくて、気持ちも落ちつく。
「ロシアンティー
デモ 用意サセマショウ。飛行機デ アマリ 休メナカッタナラ 時差ガ コタエマスカラ。」
「シューラ先生、少し寝たら、お腹も減っちゃいました。」
頭をポリポリかいてバンビが言った。
「ソウ! ソレナラ早速ピロシキタイム 二 シマショウ!」
シューラはバンビの為に早くから用意していたロシア料理をふるまえると、揚々とキッチンのほうに向かって行った。
あとについて行く途中で、ふと窓の外を見た。
空港から迎えの車で連れてきてもらった時のまま、外は真っ暗だ。冬のロシアは夜が長いと聞いていた。
「ほんとに遠いところにきちゃったんだなぁ……。」![image=457662219.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/457662219.jpg?width=800&format=jpg)
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