第1章

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「これで何件目だ?」 「さあ もう同僚がやられるのをカウントするのも辛くなってきた」 7回 正確にはもっとだがこのいかにもいろんな意味で臭い男らがカウントするであろう回数 それは7回だった 男らは続ける 「この前着てたやついるじゃん? アイツ本人見たかもしれねえ」 「じゃあ 今から呼ぼうぜ」 「そう来ると思ってた もう呼んでおいた そろそろ来るだろ」 俺は厨房に戻り入り口に注意を払いカップを洗った 静かな店内 いや沈黙の店内と言うべきか 昼下がりの時間には合わないぴりぴりとしたもので とても喫茶店らしくリラックスが出来る空間とは程遠い空気 それをゆっくりと天井に穿かれた棒から咲くシーリングファンがかき混ぜる 水道水が流れる音とカップが机に置かれる音 それだけがランダムに流れるのに退屈を覚えた時 玄関のベルが鳴った 客は男 黒いカッターシャツを着た男 男はさっきの男の席の方向を向き手を振った 腕を下ろすと同時に大股で席に近づき椅子を静かに引いた 横目でこちらを見ながら注文した 「店員さん アイスコーヒー」 「かしこまりしました」 ストローと氷の入ったグラスを用意し 年季の入ったコーヒーメーカーの前に立ちコーヒーを淹れた それを淡々と運ぶ
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