蟲について

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居間のテーブルに30㎝ほどのガラス張りの水槽が置いてあった。 水槽というと魚を飼育するイメージだが……水を入れなくても水槽と言うのだろうか? まあ、どうでもいいけど。 「これね、貴重な虫ってのは」 ミミズのパックを開けて、そのうちの一匹を割り箸でつまむ。 生き餌だけあって、ミミズは外気に触れた瞬間、元気になった。 のたうちまわるように体をくねらせて、激しく抵抗するエサに、少しばかり同情しないでもない。 「……でも、気持ち悪ぅ」 そんな葛藤もむなしく、水槽のふたを手早く開けて、さっさとミミズを放り込んだ。 「ほら、エサだよっと。ありがたく――」 あれ? 不審に思い、水槽をのぞきこむ。 虫とやらの姿は見当たらない。水槽の中では、ミミズが暴れているだけだ。 「どこに……」 上から見えないので下からのぞいてみる。 すると、その刹那―― 「きゃッ!?」 何かが、僅かに開いたふたの隙間から飛び出した。 そして、それは目にも留まらぬ速さで、タンスの横の隙間に潜り込んだのだ。
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