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「ね!聞いて悠比!私、好きな人できたの!」
高校に入学して、早3ヶ月。
背中までの黒髪を揺らす少女は笹倉弓月。
丸い大きな瞳には、焦ったような、嬉しいような表情が滲んでいた。
「マジで!?…誰さ?」
そんな弓月に振り返り笑顔で訊ねるのは春日悠比。
ショートカットの茶色い髪、気の強そうな瞳。
一学期も終わりに近づいた今の時期。
弓月と悠比は学校こそ違うものの、お互いを親友として毎日を過ごしていた。
「うん、あの人!」
興味津々に訊ねる悠比に、弓月は前を歩く男子生徒を指差した。
「…誰?」
「ちょっと悠比!同じクラスだよ!?」
すると悠比はむぅ、と考える仕草をした。
「んーダメだ。基本あたし接点ない奴覚えないからなぁー」
「何言ってんの!!クラスメイトという接点があるでしょーが!」
しばらく言い合い、悠比は溜め息をつきながら話を戻す。
「で、結局誰よ」
「…同じクラスの、神山迅助君」
頬を赤く染め、弓月は呟いた。
悠比はそっかと言って、にぃっと笑った。
とても、嬉しそうに。
弓月も、つられるように微笑む。
この時、思いもしなかった。
この恋には、尋常でない高い高い壁がそびえたっていることに。
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