伝説のナルシスト

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中学生の頃、友達に最強にナルシストな奴がいました。 「彼女はただの飾り」 「歯を磨くのはキスの前だけ」 「俺に何かされて嫌がる女はいない」 等、数々の名言を残している痛さ全開で、年齢=彼女いない歴の友達。 仮にT君とします。 そんなT君とある日、2人で海へ遊びに行きました。 待ち合わせで彼の家に向かうと、まず一番に新しく買ったピンクの水着を自慢されました。 何やらオサレな水着で、私服代わりに着れる程オサレと自慢してくるT君。 ほうほう。 そして早速その水着を私服として着ていくT君。 「これで着替えとかしなくて済むんだぜ。Tシャツ脱ぐだけで海入れるんだぜ。俺すごくね?」 うん。 まあ、すごいのはお前じゃなくて水着だけどな。 そんなツッコミは心の四次元ポケットにしまいこみ、電車で海へと向かいます。 更衣室で水着に着替える僕とは裏腹に、海につくやいなやTシャツを脱ぐだけで海に入るT君。 よっぽどその水着の凄さをアピールしたかったんだね。 しかし、小一時間ほど泳いでから一旦砂浜に戻った時に、異変が起きます。 ついさっきまで海ではしゃいでいたT君。 しかし砂浜に戻ってきたT君には、そんなさっきまでの笑顔は見当たりません。 これから葬式にでも行くのかなっていうような面持ち。 原因はすぐにわかりました。 T君はポケットに手を突っ込んで、びしょ濡れになった携帯を取り出したんです。 うん。 そうだよな。 私服代わりにしてたから、ポケットに携帯入れたまま海に入っちゃったんだよな。 防水携帯ではないT君の携帯。 ひたすら黒い画面のみが表示されています。 この時ばかりは僕も同情して、吹き出しそうになるのを我慢して、ニヤニヤするだけに留めました。 海に来るまではナンパしようと張り切っていたT君。 T君はもうそんなテンションじゃあありません。 とりあえず帰ろうかという話に。 しかし、帰る時にもう一つ問題発生。 うん。 T君、水着を私服代わりにしてきたから、着替も何もないんだよね。 水滴を水着から滴らせながら駅までの道を歩くT君。 電車で席ががら空きなのに、席に座れないT君。 今にも泣き出しそうな面持ちのT君。 最大限他人のフリをしている僕。 痛さ爆裂だったT君の、青春の1ページです。
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