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「……」
俺はそのまま、数歩歩き、持ってた鞄を落とすように床に置き、ベッドに倒れ込む。
「……くそっ……」
呟き、俺は軽くベッドを叩く。
新しい母親、葵さん。
その人と仲良くなるため、努力すると朝、杏奈ちゃんに宣言したが……、こんなんじゃ、仲良くなるためにどれだけ時間が掛かるか分からない……。
「……傷付けたかな……」
身体を起こし、立ち上がって、今度はベッドに座り込む。
先程の態度は、よそよそしいと言うか、なんと言うか。
まるで、他人のような態度だった。
あっちも頑張って、俺の母親になろうとしてる。
俺の顔色を伺うように話し掛けてくるけど、それでも……頑張っている。
「それに比べて俺は……」
きっかけが……、何かきっかけがあれば……、
コンコン。
と、その時、俺の部屋の扉が外からノックされた。
「……」
何となくだが、相手が誰なのか予想出来た。
『昴流。僕だ。入っても大丈夫かな……?』
扉の外からは、父さんの声が聞こえた。
案の定、扉の外には父さんがいたのだ。
「……ああ」
その問いに返事をすると、扉が控えめに開かれる。
スーツ姿である父さんを見ると、帰ってから着替えずに俺の部屋に来たことが分かった。
「昴流……」
「……」
「……」
父さんは、何かを言い掛けようと口を開いたが、すぐに閉じ、また、開いて俺に聞いてきた。
「一つ……、ああ、いや。二つ……聞いていいかい?」
「……ああ」
俺は頷いた。
「僕の目を見て、正直に答えて欲しい」
「……」
俺は父さんの目を見る。
そして、父さんは……、
「昴流。君は、僕と葵さんの再婚を……本当は賛成していないんじゃないか?」
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