アルバイトでもしてみようぜ!

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4月10日 始業式から数日。 我が第二高等学校も授業が始まった。 一年と比べ、授業内容はかなり異なるが、俺は特に可もなく不可もなくと言ったところだ。 ……ってか、今の俺にそんなことはどうでもよかった。 黒板に書かれたことはノートにメモるが、メモった後は、物思いに耽る。 普段の俺なら、物思いに耽ることなどないが、今回は少々……な。 「うーん……」 放課後。 クラスメートが帰っていく中、俺は自席の机に置かれた数枚の紙を見て、悩んでいた。 「あーにき。何を悩んでんすか?」 「どうした? 何か悩み事か?」 と、そこに男子生徒、女子生徒、一人ずつが俺の所に来た。 一平と杏奈ちゃんである。 ちなみに、流子と朱乃は部活でここにはいない。 「おー、ちょっとな」 「ん? これは何だ?」 と、机に置かれた数枚の紙を見つけた杏奈ちゃんが、一枚を手に取る。 「バイト募集……。何だ、バイトでもするのか? 昴流君」 「あー、ちょっと金が必要になってな。時給のいいバイトを探してたんだよ。……けど、なかなかいいバイトが見つからなくてな」 俺は杏奈ちゃんからその紙、バイト募集の広告を返してもらう。 「……」 俺がバイトを始めようと思ったのは、今から三日前のこと。 あの父さんの言葉だった。 「4月20日。この日は葵さんの誕生日だ。その日にプレゼントか何かをして、仲良くなるきっかけにしたらどうだ?」 プレゼント。 それは、仲良くなれるかもしれないきっかけの一つだ。 何かをプレゼントするなら、値段の高い物がいい。……そういや、葵さんは何をプレゼントすれば喜ぶのだろうか? 知るべきなんだろうが、直接、本人に聞くのもなんだかな……。出来るならビックリさせたいしな。本人に俺が聞いたら、感づかれてしまうかもしれないし……。 「……」 いや、今は金、だな。 しかし、誕生日まで10日か。その期間だけで雇ってくれるバイトをないだろうか。そして、時給もいい所を。 刹那、 「あら? まだ帰りませんの?」 声が聞こえた。
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