死に神と天木ちゃん

6/19
前へ
/103ページ
次へ
「物騒な設定ね。とてもじゃないけど信じられないわ」  ひらひらと掌であしらいながら立ち上がる。  馬鹿馬鹿しい。  中二病にも程がある。  天木ちゃんは冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注ごうとするが、 「真実ですよ――天木さん。貴女は特異点です」  手が止まった。  紙パックを握る手に力が入り震え出す。  牛乳を勢いよく置いたせいで、中身が飛び出し床を、壁を、キッチンを汚した。 「じゃあ私が死んだら大勢の人が死にます! だから私を守って下さいなんて見ず知らずのストーカー野郎に頼めないし、そもそも私は特異点だとか死に神だとか信じられないの!」  感情に任せて、思いの丈をぶちまける。彼女の意見はもっとも過ぎる。  今まで死に神だとか、特異点だとか、そんなものゲームかアニメ、それか心霊番組以外では全く馴染みの無い架空の存在。  そんな有りもしない、居もしない、存在しているのかも分からない死に神が「貴方は特異点で、貴方が死ぬと大勢の人が死にます」と言われてもなんのこっちゃ。  頭の天辺に「?」が浮かぶのが目に見えている。極度の精神病を持っているのではないかと疑ってしまう。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加