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☆――――☆
ついさっき変体に襲われた健気で健全な女子高生、天木恋香ちゃん。
住宅街の片隅、電柱に片手を当て呼吸を整える。
ふんわりボブショートの髪の毛が揺れ、後ろを向く。
怪しい人はいませんよ。
「助かったぁ……なんだったのかしらあの気持ち悪いの」
息が整い、歩き出す。
彼女の目的地はマイホーム。部活とか特にしていない彼女は、寄り道とかする訳でもなく真っ直ぐ家に向かう以外に選択はない。
むしろ真っ直ぐ家に帰っていたのにもかかわらず、気持ち悪い生命体――失礼、十六夜君に遭遇してしまったのだから。
てくてくと、小さな歩幅で確実に帰宅していく。
しかし――十六夜君も十六夜君です。諦めの悪い死に神です。
そうみすみす彼女を取り逃がす男ではありませんよ。何せ彼は――
「私が女の尻を追う速さを貴方は知らないようですね」
ゴミ捨て場。
ゴミ箱の中からギロリとこちらを見ている眼光が二つ。
彼女は考えた。
目の前にはさっきの変体がゴミ箱の中にいる。
幸い今日の授業でガムテープを使ったため、それが鞄の中に入っている。
天木ちゃんは「えいっ」と、可愛らしい掛け声でゴミ箱の中から覗き込んでくる目玉を潰し、絶叫しながらもぐら叩きのごとく飛び出してきた十六夜君の脳天に辞典チョップ。
うまい具合に相手を気絶させられたので、ふたを閉め、ガムテープで固定。
これで安心だね!
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