携帯電話は死者へのホットライン

77/254
前へ
/1594ページ
次へ
顔は痛々しいが、イズミの機嫌がいいので、加奈子は今日ならいけるかもと思った。 「今日は駅まで一緒に行けないかしら」 「そうだな。今日は駅まで一緒に行くか」 加奈子のお願いに、イズミは上機嫌で承諾した。 イズミの返事を聞いた加奈子達は、「ワーッ」と湧いた。 イズミも「アッハッハッ」と高笑いした。 五人で盛り上がりながら校門を出ると樋口がいた。 楽しい気分がぶち壊しだ。 「今日は何だよ」 「一緒に帰ってくれませんか」 昨日別れた時とはうって変わって、樋口は暗い表情だ。 加奈子は自慢げに、「残念ね。今日は私達と帰るのよ」と樋口に言った。 樋口を交える気はさらさらない。 「まあまあ。君達とはまた今度帰ろう」 「えー!何で?」 悲鳴のように、四人に叫ばれた。 「次回埋め合わせするから。今日はごめん」 イズミに頼まれ、加奈子達は渋々先に帰って行った。 「邪魔してすみません」樋口は謝った。 「話があるんだろ?」 イズミは何か言いたげな樋口に水を向けた。 「分かりますか?」 「顔に書いてある」 樋口は何も言わなかった。 二人は黙って商店街を歩いた。
/1594ページ

最初のコメントを投稿しよう!

370人が本棚に入れています
本棚に追加