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◇◇◇
水寺は自分の部屋で、手元の携帯を見ていた。
時折着信があるが、音も出なければ、バイブで震える事もない。
でも小さなライトが光るから分かる。
水寺はその携帯には出ない。
ただ着信があるのを、黙って見ているだけだ。
そこにドアの外から、成美の声が聞こえた。
「入るわよ」
一応入る前に一声かけてくる。
水寺は慌てて机の引き出しに携帯を仕舞った。
「千晶君、何しているの?」
部屋に入ってきた成美は、水寺の挙動不審を怪しんだ。
「何でもない」
「今何か隠した?」
「何も隠していない」
「じゃあ引き出しを開けて見せて」
「駄目」
そこに母の声がした。「千晶!ちょっと!」
「全く煩いな。ここ、絶対開けるなよ」
水寺は成美に念を押すと、母の元へ行った。
成美は絶対何か都合の悪い物を隠していると信じた。
それで机の中を見てみようかどうか悩んだ。
変なものを見つけては嫌だけれど、放っておいて、悪い方向へ進んでも心配だ。
「ちょっとだけ見てみよう」
駄目だと言われたのに、誘惑に負けて少しだけ開けてみた。
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