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その他にもセリからはお姉さんにでもなったつもりなのか、女の子の気持ちについていろいろなことを教わった。
こういう事をいわれると嬉しいとか、こういう時はこんな態度をとって欲しいとか、セリは男にとっては面倒くさいことばかり言った。
「どうして煩(うるさ)いことばかり言うんだよ」
「イズミにはいい男になってほしいから。私が連れて自慢できるようにね」
それって楽しいのかと疑問に思ったが、元来イズミの性格はとても優しく辛抱強いので、セリの要求はなんとかこなすことができた。
やがて自分でも女の子に対してとる態度や言葉に自信がもてるようになっていった。
こうして一緒にいるうちに、徐々にイズミもセリの愛を受け入れる気持ちになっていった。
◇
ある日、タイセイが居ない時にセリがやって来た。イズミとセリはベッドの上に並んで腰掛けた。
セリはイズミに会いに来たきっかけをやっと話してくれた。
「私、自分の家が嫌いなの。だから出来るだけ外にいるようにしている。でも一人で街を歩いていると変なのが寄ってきてウザイ。ここに来ると楽しい。イズミと出会えてよかった」
街をうろついている時にイズミを見かけて興味を持ったと言う。
「でもまだ小学生だし、小学生を好きになるなんて変だと思ったの。だから時々見かけるだけで満足していたんだ」
でも、と一瞬暗い目をした。
「軽蔑しないで聞いてくれる?」
いつになく真剣な目をしてイズミを見つめてきた。
「軽蔑なんてしないよ。何?」
「初めてここに来るちょっと前に、遊び仲間から襲われたの。友達だと思っていたから三人だけになった時、その二人に襲われた。それでそのグループは抜けたの」
その時のことを思い出しているのか、涙を浮かべて唇をかみ締めている。イズミは彼女の苦しみをどう受け止めてあげればいいのかわからなかった。
「本当に軽蔑しない?」また訊いてきた。
「しない」
「お父さんにもお母さんにも言えなかった。お父さんはあたしの本当のお父さんじゃないの」
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