HANABI

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蒸し暑い真夏の真っ黒な夜に 空に向かって大砲が放たれる 遥か天空に大輪の花が咲き 人々は感嘆の声をあげる 咲いたばかりの花びらは 次々に真っ黒な夜へと溶けてゆき 花びらを溶かした夜風は 私達に夏の夜の香りを届けてくれる 硝煙と草の香りがぬるま湯のような湿度に浸かり 君の浴衣から夜空へと金魚が泳ぎ出す 金魚は黒い湿度の中を泳ぎ回り 私達を幻想へと誘い込む それは夏の夜にだけ現れる 現実とも幻想とも言えない時間の狭間 君の浴衣姿がまるでまやかしのように感じられ 喧騒すら全く聞こえない 不意に色々な言葉や想いが 浮かび上がっては黒い空に溶けてゆく わたくしと君の想いが 夜空に溶けてゆくようで わたくしと君の輪郭が 夜空に溶けてゆくような気さえする それは夏の夜にだけ現れる 現実とも幻想とも言えない一瞬だけの時間の狭間 蒸し暑い真夏の真っ黒な夜に 空に向かって大砲が放たれる 遥か天空に大輪の花が咲き 人々は感嘆の声をあげる 夜空の金魚は大砲の音に驚いて パっとはじけて消えた
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