ただの夏

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「あっちい」 僕は冷房の効いた部屋で1人、呟いた。 「あっちい」 そんな感覚。 もうどれくらい味わってないだろう。 冷暖房の効いた家で一日中暇な日を過ごす。 母親に飯を持ってこさせる。 トイレと風呂以外、部屋の外には一歩も出ない。 ……照りつける暑さとか鬱陶しい雨とか、どんなものか覚えてないくらいだ。 なんかマズいんだろうなー、と最近思い始めた。 もう32歳だし。 学校の同級生だった奴らは、けっこう結婚してる。 少なくとも、僕みたいな生活してるのは誰もいない。
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