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「…一体何を教わっている」
「え?世の中のいろいろな事を習ってるよ」
「…女庭訓は」
「じょていきん?何それ」
「………」
眼を閉じてゆっくりと息を吐き出す。
言ってやりたいことが喉を突き破って出て来そうだったが、俺はそれを押し止めた。
…時代が変わったのだ。
ならば俺がそれをとやかく言う道理はない。
目を開ければ少女が不思議そうな顔で俺を見ていた。
くりくりとした真ん丸の目が俺の全てを見逃さまいと射抜く。
「…何に夢中になっても良いが、少しは作法を学べ。最低限の常識は身につけろ」
「えぇー…」
「作法は身を守る。女なら尚更にな」
当たり前のことを言えば、少女は目を瞬いてから笑う。
「身を守るって、どこに危険があるの。だって私はわらしとずっと一緒にいるのに」
その言葉に僅かに眉間に力を入れた。
…俺に関わってしまえばもう離れられん。
少女はこの歳でもうそれを覚悟しているのか。
「…ならば、俺にもう少しましな茶を淹れられるよう努力しろ」
「そうだね」
笑いながら、少女は何かを思い付いたように手を叩いた。
「そうだ!わらしがお茶の淹れ方を教えてよ!」
「は………?」
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