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数ヶ月後。
女は再び栄華を手にしていた。
華やかな着物。
豪華な食事。
花や月を愛で、面白おかしく過ぎる日々。
男は女にも童子にも優しく、日々は夢のようだった。
「かあさま。寝よう」
「ええ」
寝る時は必ず童子を抱きしめて眠った。
夢から覚めるのが怖かった。
朝起きたらぼろ屋の天井が見えて、枕元には穴の開いた鍋が転がる。
隣には誰も居ない。
そんな風になるのが怖かった。
震えながら童子をきつく抱きしめると、決まって「大丈夫」と抱きしめ返してくれる。
「大丈夫だから、ずっとこうしていてね」
「ええ。私の可愛い子。ずっと離さない」
そうして今夜も夜は更ける。
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