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「…しかし、あれはどうしたものか」
それは、童子の成長についての話だった。
童子はこの数年で、一寸たりとも成長していなかった。
「髪も伸びんとは…不思議な事もあるものだ」
「気味の悪い子…。妖ではないかと常々思っております」
「ほう」
実際、童子は不気味だった。
何を与えられても笑顔を見せることはなく。
何を見せても喜びを表すこともなく。
怪我をしても泣きもせず、翌日には綺麗さっぱり治っている。
上等な着物を着せてやっても、何時の間にか出会った頃の藍色の薄い着物に着替えている。
使用人や職の場の者達も不審な目を向け始めていた。
「元服しても、あのままなのではないでしょうか」
「…それは困るな」
「でしょう。元は拾い子。跡取りと言うわけでもないのです。この子が産まれる前に、どこかへ奉公に出しましょう」
「お前はそれで良いのか?」
「ここまで面倒を見てきたのです。貴方にも目をかけてもらい、こんな暮らしが出来て十分に幸せだった筈」
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