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燃える
燃える、燃える
全てが、燃える
「誰か!誰かおらんか!」
女は寝間着姿で業火の中を彷徨っていた。
女のすぐ横で熱された木がバチンとはぜる。
チリチリと髪を焼く臭いが鼻をついた。
熱風が踊る度、火の粉が舞い上がる。
足の裏が真っ赤に焼けただれてしまったが、足を止める訳にはいかない。
「だれか…!」
喉が焼けるように痛い。
息をする度にそれは酷くなった。
火の勢いが弱い柱の陰にへたり込む。
ひゅーひゅーと、喉が鳴る。
――何故こんなことになったのか。
朝、童子が発ったと聞いた。
厄介者が消え、これから本当の親子水入らずで暮らせると、両手を掲げて喜んだところだというのに。
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