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穴だらけの障子に隙間だらけの襖。
風が吹くと、そこから細かな雪が舞い込んだ。
舞い込んだ雪は、暫く溶けない。
それはこの部屋の寒さを語る。
――いつ溶けるのだろう。
「ひーぃふーぅみーぃ…」
童子は膝を抱えるようにして座り、その雪が溶けるまでの時間を数えていた。
その時、襖の向こうで物音がした。
開け難そうな襖が半分ほど開き、中年の痩せ細った女が膳を持って顔を覗かせた。
「寒かったろう。待たせてすまなかったね」
女は童子の前に膳を置いてやった。
少しの粥と、干した大根を戻したもの。
童子は女と膳を交互に見た。
「いいの?」
「いいともさ。こんなもんしかなくてすまないね。さ、お食べ」
童子は小さく頷くと、姿勢を正して手を合わせた。
「いただきます」
ゆっくり口に箸を運ぶ様を、女は嬉しそうに目を細めて眺めていた。
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