序章

2/23

431人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
  穴だらけの障子に隙間だらけの襖。 風が吹くと、そこから細かな雪が舞い込んだ。 舞い込んだ雪は、暫く溶けない。 それはこの部屋の寒さを語る。 ――いつ溶けるのだろう。 「ひーぃふーぅみーぃ…」 童子は膝を抱えるようにして座り、その雪が溶けるまでの時間を数えていた。 その時、襖の向こうで物音がした。 開け難そうな襖が半分ほど開き、中年の痩せ細った女が膳を持って顔を覗かせた。 「寒かったろう。待たせてすまなかったね」 女は童子の前に膳を置いてやった。 少しの粥と、干した大根を戻したもの。 童子は女と膳を交互に見た。 「いいの?」 「いいともさ。こんなもんしかなくてすまないね。さ、お食べ」 童子は小さく頷くと、姿勢を正して手を合わせた。 「いただきます」 ゆっくり口に箸を運ぶ様を、女は嬉しそうに目を細めて眺めていた。  
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

431人が本棚に入れています
本棚に追加